今回は質屋の「他店で修行」について解説させていただきます。
歴史の長い質屋には徒弟制度のようなものが未だに残っており、質店経営者が自分の跡継ぎを他の質店に弟子入りさせて、実務を通じて質屋の基本(法令、商慣習、真贋判定術、接客術、取引先との人脈形成等)を学ばせる事例が多くあります。
一般的には地方の質店の子息が高校・大学等を卒業後、都心部または地元の大手質店に新卒として就職する事例が多いようですが、卒業後に業種の全く異なる会社で働いたのち、家業を継ぐ前に修行に出る場合もあり、また質屋業界と関係の深い古物市場(業者間オークション)や古物販売を営んでいる会社などを修行先として選択する場合もあります。
かつては質屋業務の基本を習得させ衣食住を保証する代わりに、給料は無給もしくは寸志程度の場合もありましたが、近年は労働環境に関する意識の高まりを受けて一般的な就職先として他の従業員と変わらない待遇を受けているようです。
せっかく数年かけて育った人材を手放すわけですから、他店からの修行者を引き受けることは名誉とされており、また修行先によっては退職後も深い交流が保たれ、業界内でも一定の勢力が形成されます。
担当 (株)丸万質舗 川崎