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講談社Kiss誌11月号が発売です!

こんにちは、しちまるです。9月下旬になって、ようやく酷暑が和らいできましたね。朝晩はぐっと過ごしやすくなり、ホッと一息つけるようになりました。季節の変わり目は体調を崩しやすいので、皆さまどうぞご自愛ください。

さて、9月25日(木)に講談社Kiss誌11月号が発売になりました。なんと今月号は、我らが『七つ屋志のぶの宝石匣』がKiss誌の表紙をカラーで飾ります!表紙には、銀杏並木を歩く志のぶと顕定の姿が描かれています。黄金に染まる小径を並んで歩く二人の穏やかな空気感が、温かな光と共に伝わってくるような素敵な一枚に仕上がっています。

©️講談社

そして扉絵もカラー掲載!今回は鷹臣が印象的に描かれ、物語のキーアイテムとなる封蝋された手紙が美しく配置されています。「手紙が運ぶのは、幸福な知らせ……?」という謎めいたコピーも気になるところですね。

©️二ノ宮知子/講談社

『七つ屋志のぶの宝石匣』の魅力は、小ネタ満載のコメディから人情回、質屋回、宝石回、そして顕定やダイヤの秘密の核心に迫る謎解き回まで、多種多様なエピソードが楽しめる点です。二ノ宮知子先生の表現の幅広さには、毎回感動させられます。本当に天才ですね。

表紙・扉ともにカラーという一粒で二度美味しい今月号は、まさに読書の秋にぴったりの一冊です。ぜひお手に取ってご堪能くださいませませ。コミックス25巻も絶賛発売中です!

さて、華やかな漫画の世界から少し視点を変えて。この秋、私が向き合ったもう一つの『物語』についてお話しさせてください。

戦争を「観る」ということ

 

お客様との会話で、不思議と藤田嗣治の話題が続きました。「戦争画は東京国立近代美術館よ」「藤田の真髄は戦争画よね」。そんなやり取りから、「戦争をいかに観るか」という問いが浮かびました。ウクライナやガザで真偽不明の映像があふれる今、その問いを携えて、東京国立近代美術館で開催中の『記録をひらく 記憶をつむぐ』展へ。

 

『自己陶酔』と『哀歌』――藤田嗣治・水木しげるが描いた戦争

 

藤田嗣治の「自己陶酔」

 

藤田の代表作『アッツ島玉砕』(1943年)の前に立つと、血の粘度や金属の冷たい反射まで伝わってきて、まるで現場を目撃しているかのような緻密さに息を呑みます。戦争という極限状況は、彼の技術を余すところなく発揮させる舞台でした。軍部の支援と国家の期待は「これほどのものを描けるのは自分しかいない」という万能感を育み、異邦人として過ごしたパリから日本の大衆の熱狂へという転換が、その「自己陶酔」をいっそう強めたのでしょう。200号の大作を目の当たりにすると、圧倒的な画力に引き込まれ、画面の完成度に魅了されます。それでも、そこに描かれる暴力や死の現実を美化しない距離を、そっと保ちたい――そう感じました。

 

図1:藤田嗣治『アッツ島玉砕』(1943年)展示風景

撮影:筆者(東京国立近代美術館『記録をひらく 記憶をつむぐ』展、2025年)

※著作権:権利者(JASPAR管理) ※本論考における引用は批評・研究目的です

 

水木しげるの「哀歌」

 

同じ会場のガラスケース内に展示されていた水木しげる『聖ジョージ岬・哀歌 総員玉砕せよ!!』(1973年)は、対極の表現でした。密生した叢林、重なる遺体が細密な線で刻まれ、黒が画面を支配し、視線の逃げ場を奪います。藤田が「万能感」に支えられた「自己陶酔」を追求したのに対し、水木の筆致は徹底して自己を消去し、死者の声を代弁しようとしています。片腕を失って帰還した水木は、作家としての自己表現よりも体験者としての責任を重んじます。展示では固定されたページのみでしたが、新装完全版で読み知る物語の終盤、「女郎の唄」を口ずさみながら突撃していく場面には、冷酷な制度の中でも人間が守ろうとする、かすかな尊厳の灯が浮かび上がって見えました。

 

図2:水木しげる『聖ジョージ岬・哀歌 総員玉砕せよ!!』(1973年)展示風景

撮影:筆者(東京国立近代美術館『記録をひらく 記憶をつむぐ』展、2025年)

※著作権:水木プロダクション ※出版権:講談社 ※本論考における引用は批評・研究目的です

 

記録をひらき、記憶をつむぐ責任

 

藤田も水木も、それぞれの方法で戦争と真剣に向き合いました。表現は違っても、どちらも誠実でした。もし私があの戦争が始まった頃の熱狂の中で、勇ましい絵を見ていたら、冷静でいられたでしょうか。正直、自信がありません。

 

作品の巧みさに心を奪われる前に、そこに何が描かれ、何が見えないままなのかを、そっと確かめたい。情報があふれる今だからこそ、立ち止まって見る力を大切に育てていきたいのです。そんな静かなまなざしこそが、記録をひらき、記憶をつむぐことなのだと思います。

関連書籍:

『総員玉砕せよ! 新装完全版』(水木しげる)講談社

私もこの新装完全版を持っているのですが、まさか会場で初版の単行本を目にするとは思ってもいませんでした。あの「哀歌」という副題が入った貴重な初版との出会いは、思いがけない驚きでした。

企画展情報:

『記録をひらく 記憶をつむぐ』展

会期:2025年7月15日~10月26日

会場:東京国立近代美術館1F企画展ギャラリー

戦争画がこれほどまとまって見られる機会は、そう多くはないでしょう。会期も残り1カ月となりましたが、もしお時間が許すようでしたら、ぜひ足をお運びください。

漫画や戦争画と同じく、音楽もまた物語を紡ぐアート。この秋、福岡で開催される『のだめカンタービレ』のコンサートで、その魅力を体感してみませんか?

 

『どこ行くと?! のだめカンタービレ・クラシック・コンサートばい in 大川』

 

日程: 2025年10月26日(日)

開場: 14:00/開演: 15:00

会場: 大川市文化センター(福岡県大川市大字酒見221番地11)

料金: 全席指定 前売9,000円/当日10,000円

 

出演者

  • 茂木大輔(指揮)- 「のだめカンタービレ」音楽監修者
  • 石井琢磨(ピアノ)- ウィーン在住の実力派ピアニスト
  • 岡山フィルハーモニック管弦楽団(のだめ特別編成版)

 

のだめの故郷・大川市で聴く「悲愴」「春」「ラフマニノフ2番」など名曲の数々。作品の音楽監修者・茂木大輔氏による本格演奏をお楽しみください。

 

残り1ヶ月を切った今、ぜひお早めにチケットをお求めください!詳細は公式ページをご参照ください。

漫画のワクワク、戦争画の深い問い、音楽の感動――秋の文化を楽しみながら、心に残る物語を紡いでいきたいですね。しちまるでした、ではまた!