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講談社Kiss誌2月号の発売です!

こんにちは!しちまるです!いよいよ今年も終わりに近づいてきました。雪がどうなるか気になるところですが、安全第一で商売繁盛といきたいものです。

 

さて、12月25日に講談社Kiss誌2月号が発売されました!いつも思うんですが、12月発売なのに「2月号」って不思議ですよね。まあ、そういう業界の慣習なんでしょうけど(笑)。

©️二ノ宮知子/講談社

今回の扉絵でお団子頭の志のぶが披露する装いは、現代的なチャイナドレスの元になった、清朝宮廷服「旗装(チーチュアン)」を思わせるものです。流れるようなシルエット、広がった袖、そして腕に輝く翡翠のアクセントが印象的。かつて西太后が愛した翡翠を際立たせるこの装いを選んだ二ノ宮先生のセンスに、思わず感嘆せざるを得ません。青磁を思わせる色合いの衣に、翡翠の艶やかな輝き。歴史と現代が交わる美しさを感じさせる一枚です。

 

本編では、翡翠をテーマにした物語が展開し、翡翠の産地である雲南省の少数民族—おそらくイ族やハニ族—の衣装も登場します。扉絵で見せた「満州族の宮廷装束」と、物語の中で描かれる「雲南の民族衣装」。これら二つの文化の対比が、視覚的にとても魅力的な回を作り上げており、服飾史・民俗学ガチ勢にはたまらない仕上がりになっています。本当に素晴らしい!

詳しくはお買い求めの上、海原雄山もニッコリ、至高の二ノ宮ワールドをご堪能ください。

倭寇、海賊、大航海!——漫画で読む、熱くて自由な「500年前の海洋ロマン」

さてここからは、漫画紹介のコーナーです。

中国といえば、雲南省をはじめとした内陸だけでなく、海の方も歴史が熱いのですが、昨今、東シナ海・南シナ海を巡る緊張は続き、中国は「九段線」などの歴史的権利を主張し、海に厳格な線を引こうとしています。こうして現代の海は、国家のメンツと監視の目が光る、少し窮屈な場所になってしまいました。

 

しかし、時計の針を500年ほど戻してみると、そこには、どこの国の中央統治も完全には及ばない、自由でアナーキーな海が広がっていました。中華皇帝が世界の中心だという「建前」を、海に生きる人々がたくましい「本音」で乗り越えていた時代。その痛快な歴史を、4つの漫画作品から覗いてみましょう。

 

【4作品紹介】

 

1. 『海賊×少女』(梶川卓郎)

物語は1523年、明の港・寧波で起きた「寧波の乱」から始まります。時は下って1554年。室町将軍の命を受け、遺失した「日本国王印(金印)」を取り戻すため、凶悪な海賊・徐海や倭寇が支配する海へと乗り込む少女のアクション活劇。琉球王国から始まり、奴隷市場をはじめとする当時の生々しい描写が「ハードボイルドな中世」の空気を醸し出しています。初っ端から「寧波の乱」の描写が11P続き、歴史漫画界隈がざわついた作品。

 

2. 『カタリベ』(石川雅之)

『もやしもん』で知られる石川雅之先生が大ブレイク前に描いた、倭寇をテーマにした海洋冒険物語。主人公は、大陸の覇権争いに敗れ、水上生活者となった一族「九姓漁戸」に育てられた少年。彼らや海の守り神「バハン(八幡)」を信仰する倭寇、さらには「鬼」と呼ばれる異形の者たちが入り乱れます。朝鮮半島に舞台を移し、女真族の戦士が登場し、さあこれから、というところで、掲載誌廃刊により打ち切りとなった作品。荒削りな面もありますが、『もののけ姫』をはじめとした宮崎駿作品に対する愛が溢れており、実は大好きで何度も読み返している作品です。

 

3. 『海帝』(星野之宣)

明の永楽帝の命を受け、前人未到の大航海に出た、元ムスリムで宦官の鄭和を主人公に、『宗像教授伝奇考』の星野之宣先生が描く海洋ロマン。現代中国が主張する海洋権益のルーツ(朝貢体制の確立)となった鄭和の大遠征を下地にしていますが、その用心棒になんと五島列島の倭寇を雇うという大胆なアレンジが光ります。全編、星野先生ならではの伝奇エキスがたっぷり詰まった怪作です。しかし、あの時代に明国の大艦隊が遠くアフリカ東岸のモザンビークまで航海しているんですね。ちょっと驚きの歴史です。

 

4. 『麗島夢譚』(安彦良和)

島原の乱を生き延びた天草四郎が、倭寇と共に台湾(麗島/フォルモサ)へ渡った場合の物語。舞台は、明の海禁と幕府の鎖国政策により、かつて自由だった海が閉じられつつある時代。しかし、台湾は最後の「空白地帯」として、スペイン、オランダ、華人、倭寇、原住民が入り乱れていました。エンターテイメントに徹した作品で、歴史ものが苦手な人でも難しく考えずに楽しめます。ところで、先日『描く人、安彦良和展』に行ってまいりました。巨匠の生原稿を見ることができて感激!東京、渋谷区立松濤美術館での開催は2月1日までとなっております、お近くの方はぜひ!

 

歴史学者・網野善彦は、かつて日本の社会や民間の流動性を示すために「無縁・公界・楽」という概念を提唱しました。これは、社会の権力関係から切り離された自由な空間を指し、特に中世の海や辺境の地に見られる特徴として捉えられています。

 

500年前の海は、現代のように「固定された領土・領海」ではなく、流動的で誰のものでもない場所でした。もちろん、その自由は暴力や搾取とも隣り合わせでした。しかし、今のように海に線を引こうとする政治は、当時のアナーキーな海を思い起こすと、どこか「野暮」で「不自然」にさえ感じられるかもしれませんね。

 

さて、いよいよ始まる新しい年!皆様にとって素敵な年になりますことを心よりお祈り申し上げます。ではでは、しちまるでした!