こんにちは、しちまるです。
先日、自転車で都内から福生の横田基地周辺まで走ってきました。往復約90キロ。季節外れの暑さにやられて、帰りは完全にバテバテでした。
横田基地の近くには、東京でありながら、どこか日本からずれた空気があります。英語の看板、基地のフェンス、古びたバーの気配。そして、まだ戦後が息をしているような、微妙に歪んだ時間の流れ。
途中、福生のベトナム料理屋でバインミーを買いました。フランスパンにハムや野菜を挟んだ、あのベトナムのサンドイッチです。それをかじりながら、かつての赤線地帯の細い路地をふらつきました。昼下がりの色街は、夜の化粧を落として、骨だけになったように静かでした。
そんな話を文学好きのお客さんにしたら、「村上龍の『限りなく透明に近いブルー』ですね」と言われました。
自転車でただ走っていただけなのに、米軍基地、福生、ベトナム、昭和の残像が、細い糸のようにつながっていきました。そしてふと、頭に浮かんだのは、あの物騒な言葉――「石器時代に戻してやる」でした。
戦争の言葉は、不思議なくらい古びません。
さて、5月25日(月)に講談社Kiss7月号が発売されました。表紙を飾るのは我らが二ノ宮知子先生の『七つ屋志のぶの宝石匣』!巻頭で掲載です。やった〜〜!
©️講談社
©️二ノ宮知子/講談社
今月のストーリーは恋話が進む感じでとても良かったです。このまま顕定の出生の秘密や合成ダイアモンドの謎もスルスル解けていくのでしょうか。今後の展開から目が離せません!待て次号!
『のだめ』も2P特別掲載。25周年、おめでとうございます!こうなったら購入するしか他に手はございません。お近くの書店へレッツラゴー!みんな大好きミルヒーとご対面なのです。電子書店でも好評発売中です!
今月の漫画紹介
「イランを石器時代に戻してやる」――トランプの発言を聞いたとき、ふと思い出したのが、ベトナム戦争をめぐってカーチス・ルメイの名とともに記憶されている言葉です。
「ベトナムを石器時代に戻してやる」。
ルメイは太平洋戦争で東京大空襲を指揮した人物として知られ、その後、米空軍参謀総長にまで上り詰めました。東京を焼き払った男が、ベトナム戦争が本格化する直前の時代に、アメリカ空軍の頂点にいたのです。
その火の下に何人の市民がいたのか。どんな日常が焼き払われたのか。そうした想像力の欠如が、時代を超えて繰り返されているように感じます。焼夷弾による都市爆撃。人間の生活そのものを根こそぎ消し去る思想。その延長線上に、ベトナム戦争でジャングルに降り注いだ大量の爆弾とナパーム弾があったのだと思います。
今月紹介したいのは、そんな狂気と不条理を、独自の感性で描いた西島大介の長編漫画『ディエンビエンフー』完全版です。
ただし、これはいわゆる硬派で写実的な戦争漫画とはかなり違います。主人公は、米軍の準機関紙「星条旗新聞」のカメラマン。戦争を撃つのではなく、撮る側として、彼はジャングルの狂気の中へ入っていきます。
西島大介の極端に可愛らしくデフォルメされた絵柄の中で、ジャングル、アメリカ兵、ベトコン、ロック、ヒッピー文化、最新兵器、そして少年と少女の純愛が、ぐちゃぐちゃに溶け合っています。それは単なる戦争漫画というより、サイケデリックな夢と悪夢の間を往復する、ポップで残酷な寓話です。
アメリカ兵の軽薄さと突然訪れる死。可愛らしい絵柄と、どうしようもなく暴力的な現実。その落差の中に、ベトナム戦争という時代の異様さが浮かび上がってきます。
敵味方を超えた少年と少女の純愛が交差する、凄まじく不条理で、どこか幻覚的なボーイ・ミーツ・ガール――それが『ディエンビエンフー』という作品です。
『ベトナム戦記』(新装版):開高健/朝日新聞出版
あわせて読んでほしいのが、開高健のルポルタージュ『ベトナム戦記』朝日文庫新装版です。
1964年から65年にかけて、開高健が『週刊朝日』の特派員としてベトナムに滞在した記録です。大国の思惑に翻弄される現地の不条理が、開高の鋭い眼と、異様なほど豊かな文章で描かれています。ベトナムの湿気、泥や汗の臭い、火薬とタバコの匂いまでが、ページから立ち上ってくるようです。最初の数ページで、一気に引き込まれました。
朝日文庫新装版の表紙には、カメラマンの秋元啓一が撮影した開高健の姿が使われています。重たいヘルメットを被り、疲れ果てた表情でこちらを見つめるその顔が、妙に生々しく胸に残ります。
文中には秋元の写真も多数収録されています。ヘリコプター、ジャングル、泥まみれの兵士たち、そして市井の人々の日常。開高の文章と写真が重なり合う瞬間、そこにはただのルポルタージュを超えた、圧倒的な「時代の実感」があります。
ベトナム戦争は、単なる戦史ではありません。
ロック、テレビ、大量消費社会、アメリカの"時代の熱"そのものが、ジャングルの中で暴走した——二十世紀後半を象徴する悲劇のひとつです。
僕たちが物心つく前に、超大国アメリカがジャングルの中で敗北したあの戦争は、いったい何だったのか。そして、何を僕たちに残したのか。
西島大介『ディエンビエンフー』が描く、漫画としての不条理。
開高健『ベトナム戦記』が伝える、現実としての不条理。
この二冊を並べて読むと、ベトナム戦争の"狂気"が、ほんの少しだけ輪郭を帯びて見えてくるかもしれません。
『ディエンビエンフー』by 西島大介 CC BY 4.0 の条件に基づきライセンスされています。
もう平田弘史先生の題字だけで胸熱です。あの豪放磊落な筆致を見るだけで血が騒ぎます。チェストォーッ!!
しちまるでした。またね〜〜!













