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『七つ屋志のぶの宝石匣』の第27巻発売です!

こんにちは!しちまるです。

 

関東も梅雨入りし、ぐずついた日が続くかと思えば、急に炎天下の真夏日になったりと、なかなか身体にこたえる季節になってきました。

 

さらに今年は、ペルー沖の海面水温が上がり、エルニーニョ現象の発生も取りざたされています。以前は「エルニーニョ=冷夏」と言われることもありましたが、近年の夏はそう単純でもないようです。2023年、2024年、2025年と記録的な暑さが続いており、もはや夏のほうが本気を出しすぎている感があります。

 

いずれにせよ、体調には気をつけて過ごしていきたいですね。

さて、本日6月12日(金)は全国の質屋漫画ファンにとって祝日であります。

我らが二ノ宮知子先生の『七つ屋志のぶの宝石匣』第27巻が発売されました! 私のiPadにも今朝無事に配信されました。やったー!

 

宝石と質屋を題材にした漫画など他にありませんから、質屋業界の片隅で生きる私としては単行本発売の日は毎回お祭り騒ぎです。

©️二ノ宮知子/講談社

今巻の見どころは、ダイアモンドをめぐる謎の核心へ少しずつ近づいていく展開、そして志のぶと顕ちゃんの距離がじわじわ縮まっていく、その尊さです。

 

物語のテンポも少し速くなってきて、読者を飽きさせない展開になってきました。これはもう、続きが気になりますね。

 

とはいえ、まずは第27巻。みなさま、ぜひご購入くださいませませ。

さて、漫画紹介に移ります。

黒田硫黄『茄子』収録「アンダルシアの夏」

 

最近、店に来るお客さんと、たまたまスペインの話をすることが重なった。偶然といえば偶然なのだが、何人か続くと、こちらの本棚までそわそわしてくる。

 

ある夜は、若い頃にグラナダのサクロモンテでロマの人々と暮らし、フラメンコを身体に染み込ませたという奏者が現れた。またある日は、アンダルシアを南下し、ジブラルタル海峡を渡ってモロッコまで旅したという画家が、当時見た色彩の話をしてくれた。

 

そして印象深かったのは、年配の女性カメラマンの言葉だった。まだデジタルカメラなどない時代、百本のフィルムを抱えてスペインへ渡り、「毎日三本撮る」と自分に決めて、イベリアの光を追い続けたという。

 

彼女は遠い目をして、こう言った。

 

「アンダルシアはね、本当に荒涼とした土地だったの。きっと、光が強すぎるのよね」

 

その言葉を聞いた瞬間、私の頭に一編の漫画が浮かんだ。黒田硫黄の短編漫画集『茄子』に収録された「アンダルシアの夏」である。

 

舞台は、自転車ロードレースのブエルタ・ア・エスパーニャ。主人公ペペは、灼けつくようなアンダルシアの道を走るプロのロードレーサーだ。照りつける太陽、乾いた道、赤茶けた大地、逃げ場のない光。そこに描かれているのは、観光パンフレットに載っている陽気なスペインではなく、喉の奥がひりつくような、むき出しのスペインである。

 

この短編の面白いところは、単なるスポーツ漫画ではないところだ。ペペが走っているその日、故郷ではかつての許嫁カルメンが、彼の兄と結婚式を挙げている。レースの勝敗だけでなく、家族、故郷、過去の恋、どうにもならない感情が、乾いた道の上でじりじりと照りつけてくる。

 

元許嫁のカルメンという名前もまた、スペインを語る時には強い響きを持っている。ビゼーの歌劇『カルメン』の主人公はロマの女性として描かれ、西欧の人々がスペインやロマの文化に抱いてきた異国趣味、憧れ、そして偏見をまとっている。だから、ここで安易に「ロマとはこういうものだ」と語ってしまうのは危うい。けれど、カルメンという名が呼び起こす熱や影には、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、そしてロマの文化が、長い時間をかけて重なり合ってきたスペインの空気が、どこかに滲んでいるようにも思える。

 

アンダルシアという土地は、ただ明るいだけではない。情熱的、という一言でも足りない。祝祭のすぐ隣に喪失があり、音楽の奥に祈りがあり、乾いた大地の下に、いくつもの民族と信仰の記憶が眠っている。「アンダルシアの夏」は、その複雑さを説明しすぎることなく、一本のロードレースの中に閉じ込めている。

 

太陽が強すぎる。

大地が乾きすぎている。

人間の感情が、少し煮詰まりすぎている。

 

だからこの作品は、自転車レースの話でありながら、どこか逃げ場のない人間ドラマにも見えてくる。ペペが走っているのは、ただのコースではない。故郷であり、過去であり、かつて愛した人が兄と結婚するという、どうにもならない現実そのものなのだ。

 

映画版『茄子 アンダルシアの夏』もいい。荒涼とした大地、突き刺す太陽、乾ききった空気を、短い尺の中にぎゅっと閉じ込めている。ペペの声を演じる大泉洋さんも実にハマっているし、エンディングで流れる忌野清志郎さんの「自転車ショー歌」がまたイカしている。苦みのある物語を、最後にカラッと風通しよくしてくれるのだ。

 

店に来る旅人たちの話を聞いていると、漫画の中の風景が、急に現実の匂いを帯びてくる。グラナダの洞窟で鳴るフラメンコ、モロッコへ渡る海峡の風、百本のフィルムに焼きつけられた荒涼とした大地。それらが、本棚の中の漫画のページと、ふと地続きになる瞬間がある。

 

フィクションだと思っていた物語の向こう側に、本当にその土地を歩いた人たちの声が重なっていく。そういう時、本棚というものは、ただ本を並べておく場所ではなく、誰かの記憶と世界をつなぐ、小さな港のように思えてくる。

 

黒田硫黄『茄子』収録「アンダルシアの夏」。

そして映画版『茄子 アンダルシアの夏』

 

自転車漫画は『弱虫ペダル』だけじゃありませんぜ、旦那。

 

ページを開けば、そこから灼けたアスファルトの匂いが立ち上がる。映画を観れば、その道に光と風が吹きはじめる。そして最後に清志郎さんの声が響けば、こちらの足まで少しペダルを探し始める。

 

今夜、本棚の小さな港から、乾いたアンダルシアへ出てみるのも悪くない。

気になって漫画の舞台のアンダルシア地方の気温を調べてみたら、日本に負けず劣らず暑そうでした。いやぁ、世界中どこも夏が本気を出しすぎです。

 

これから猛暑の日も増えてくると思いますが、水分と塩分をしっかり補給して、たっぷり睡眠をとって、なんとか乗り切っていきましょう。

 

それでは、しちまるでした。

 

またね〜〜!